全体研修のプロジェクトマネージメント研修のまとめについて書いて欲しいというリクエストを以前から頂いていた。このまま、今年も終ってしまうのもどうかと思うので約束どおり、最後に少しまとめを書いてみる。
プロジェクトゲームは、3~5人のチーム分けを行い4チームで1グループを作ってスタートする。最初にプロジェクトの目的とルールを書いた紙と作業のベースとなるボードと50枚ぐらいのカードを渡される。それぞれのチームの中で、リーダーとコストコントローラーとスケジュールコントローラーを決めるところからスタート。目的をそれぞれのチームで理解し役割を決めてゲームを始める。全体のコストは120万円。計画段階のコストは、毎分15,000円/人で実施段階のコストは、毎分75,000円/人つまり1対5という定義である。渡されたボードを見せ合わずに言葉だけでコミュニケーションを取り合って4チームのボードの模様を一緒にすることがこのプロジェクトの目的である。今回は、グループが5つ、それぞれの開発部門のグループと営業+北京組でひとつそれぞれに4つのチームがいるという構成。プロジェクトのオーナーは、出題した先生で、プロジエクトマネージャは各部門長という状況だった。
このゲームを一般論的なプロジェクトマネージメントの観点から私なりに進め方を考えて実際の問題点などを考えてみた。
◆ 目的を理解して全体のコストから大枠の計画を立てる ◆
計画時のコストと実施時のコストが1対5なので、実施にかける時間を最短にする必要がある。まず、目的を具体的にイメージできる様に理解し現状を把握し時間の枠組みをつくる。
やらなければならないことはなに?
①4つのグループで同じ模様にする為にはどんな条件があるか?
・カードは同じものが全部のグループにあるのだろうか?
・ボードの欠損個所は同じなのだろうか?
・全体の絵はもともと同じものなのか?
・ゴールはどんなことなのか?
②上記の4つの作業が現状分析のWBSと考えられるので、そのマイルストーンを決めてスケジュールを立てる。おそらく、その予定された時間では終らないとかいろいろな問題があるかもしれない。。。
③時間を決めて調査した結果を持ち寄り、プロジェクトマネージャが方向づけを行う。
ポイントは、なにがなんだかわからない状況なのだからそれを各々のチームで調査して持ち寄って定義するということ。わからないから明確にすることが大切。ここでの質問も大切だが、現状はプロジェクトオーナーもわかっていないことがある。
◆ 現状分析をどのように行うか・・・ありのままの姿を数値化する ◆
現状、4チームは相手がどんなカードを持ちどんなボードの状況であるか知らない。作業はどうするか?
①カードを種類毎に分けて枚数や数値の状況を調べる必要がある。
②ボードの状況をお互いに伝え合う必要がある
③コミュニケーションが取れるような配置と場所、会話する人を決める必要がある
④スケジュールコントローラーは、決められた時間を通知する必要がある
イメージはつかめたか?つかめないが作業の方向は決められるか?いろいろな場合がある。今回のトップだったチームはほとんど計画の時間を使ってはいなかった。いわゆるアジャイルのように目的はわかった、まずやってみようっという乗りで声を掛け合う人を決めてスタートしている。(しかし、この点は最下位チームも同じ)プロジェクトの進め方を決めるには問題の複雑性とリスクを判断することが重要である。逆に時間は置いといて、コストに着目したのがブビー賞の営業チームで長い時間をかけてなにがどうなっているかをコミュニケーションした為に時間はかなりオーバーでもコストは予算内であった。惜しむらくは、営業チームなのにプロジェクトオーナーへの質問がほとんどなかったこと。コミュニケーション力をもう少し発揮すれば、十分時間も短くできたはずだと思う。
◆ ゴールを定める方法を考える・・・あるべき姿を言葉で表現する ◆
分析の結果、どのような模様にするかということが決定できると思う。これがゴールであり、あるべき姿なのだが、今回は絵に書くといったことが出来ないから言語化して伝えることが重要。特にボードの向きと既にあるカードの種類と数などは分析の時にわかっているはずなので、チームでベースラインを定めることから作業していくことができるはず。この時点で、最初のスケジュールを少し詳しく追加することができる。
①ボードの状況や向きを合わせる
②既にセットされているカードを同じ状況にする。(ベースラインをあわせる)
③空いている個所に全部のチームにあるカードを置いていく必要がある。
分析が、しっかりされていないとこのゴールとそこに至る手順があいまいなままなので実施段階でいろいろな問題が発生する。その都度、意思決定を行うことになってしまうので複雑だと不整合に繋がる。ただ、分析に要する時間も実施に要する時間も時間というファクターでは同じ物なので納期とのトレードオフを判断しプロジェクトマネージャは計画をどこまでで切り上げるかという大きな意思決定を行う。このゲームの正解は、コストに着目して分析と計画に時間を使って実施時間を短くすることなのだが・・・現実は、計画しないで進んだチームが一番早かった。
実は、逆転できるとしたらここは大きなポイントだったのだと思う。そして実際なら、オーナーに模様についての質問や確認があるべきだったと思う。白いところを残してもいいのか?既にセットしてあるカードの上にカードを置いてもいいのか?これから実施する作業をイメージしていろいろな方法を考え、お客様に確認する。ここまでに時間が押していたとしたら・・・・納期を優先すべきか、納期の遅延が許されるのかの質問もあるかもしれない。たとえ、白一色の先生が最後に仰ったようなボードになったとしても、納期を優先しなければならないというケースもあるかもしれない。・・・その答えは、その判断は実はお客様とプロマネしかできないことなのだ。
しかし、最初のほうで白一色にしてしまって納期を守るか、納期を少し遅らせるか?とオーナーに聞いたならば、事の重要さにもよるが、両方ダメっといわれることもあり得るだろう。プロジェクトマネージャーは、常にステークホルダーの利害がどのような状況にあるのか考える必要がある。そして、想像する力が必要だ。メンバーの疲労度とか実現可能性の判断なども必要である。全体を見て、その壁の模様の重要さを判断することになる。これがプロジェクトの優先順位をつけること。CFS(クリティカルサクセスファクター)としての模様の位置付けが重要だと思う。
ボードの模様について、「同じ模様にする」というだけの定義は曖昧でそのままでは作業できない。どういう方法が一番早く同じ模様になるのか・・・幾つかの方法を考えてみただろうか。この考えるというフェーズが設計にあたるのだと思う。ここに考えが及べば、勝ったようなもの。定義が曖昧だということは勘違いする可能性も秘めている。短い時間でどれだけいろいろな方式を考えられるか、そしてそのなかの最善である方式を決定して、メンバーに言語化して伝えなければならない。(最善は、最高という意味ではないQCDの観点で最善の方法を決定する)・・・今回は、この工程をみんなかなり飛ばしてしまっていて、検討せずに思いついた方式で進めてしまった気がする。ゴールはどこか、そのゴールを定義してそのゴールに最短で至る方法を明確にし共有する。それがチームプレーでは重要なことなのだと思う。定めたゴールこそが、このプロジェクトの最優先事項になるのだ。
◆ 実施・・・問題が起こった場合の判断 ◆
実施にあたっては、流石に手馴れた感じだった。だれがリーダーシップを取って決めていくか?チームごとの回答はだれがするか?読み上げたカードを探してボードに置くのはだれか?というところを決めて、手際よく作業をこなしていたように見えた。ただ、チームのリーダーが集まって情報交換するということを行うのであれば、チームリーダーは経験のある人が出てこなければ迷走するだろう。若い人に道を譲るにしては・・・少し若すぎるリーダーも多かった。これは計画時にそれぞれの作業をイメージしてきちんとした体制を取れたかということに繋がる。適所適材を考えなければ時間を短くしてプロジェクトを成功に導くことはできない。
確かにプロジェクトマネージャが、全チームに声を掛けて進めていたところは早かった。途中で、分析不足計画不足の皺寄せか、ボードの方向の違いや模様が同じにならない箇所があったりといろいろな問題が起こってきた。その対応も、それぞれまちまちだったのだが、時間を優先して、辻褄があわないところを飛ばして進めていったところが、最も早く完了したようである。同じ問題にあった時に、状況が把握できずに最初の現状分析まで戻ったチームが最下位だった。進めながら考えるということは、かなりセンスがいることだし、複雑性が増すと難しい。リスクも高い。しかし、問題を仮に記録だけして置いておいて、残りを進めながら状況を把握していくという・・・素晴らしくリスキーで効率的な方式に賭けたチームが一位だった。ほとんどおなじ計画の時間だっのにと・・・この点は興味深いものがある。実際のプロジェクトも同じかもしれない。成功と失敗は紙一重なのだ。そして、不確実であってもリスクを最低限にしてQ(品質)C(予算)D(納期)を守っていくことが我々のプロの技術であり、計画を立てるのはその為なのだと思う。調査と分析に基づいた計画を立てれば一番で無くとも、おそらく時間内にコストを押さえてプロジェクトを終了できる。そうでなければ、運の良いプロマネかカリスマプロマネしかプロジェクトを成功させられない。
◆ コンカレントにできる作業を随時平行で行う ◆
コンカレント開発とは、平行にできる作業を同時に走らせて時間を短縮する方法。例えば、基本設計中に開発のプロットタイプと、画面とDBと共通開発を別々のチームにして平行で走らせるようなもの。上記の例でいえば、分析の時にカードを種類別に何人かで調べる作業を行ったり、ボードの状況を伝え合う作業とも平行に出来たりする。遅かったチームのひとつであるプロマネが言っていたことで、メンバーがカードをちゃんと机に並べてなくて、言われた後全部から調べて置くから時間がかかったとのこと。流石にエンジニアのチームはどこも几帳面にカードを種類別昇順に並べていたので、実施時間は短くできたようである。
ことしの最後にとても長いブログになってしまったが、このプロジェクトゲームは実は本当のプロジェクト開発を効率よく行う要素がかなり圧縮して含まれていたと思う。問題を定義し、ゴールを定め、オーナーと合意したミニマムの要件で実施方式を決定しスケジュールを決める。問題が起こった場合には、プロジェクトマネージャの意思決定に委ねるが、常に納期と要件(品質)を考えて決定することが重要。プロジェクトマネージメントのQ(品質)C(コスト)D(納期)を管理するということは、時間との戦いであり、お客様の望むものをどう言語化し共有するかということだと思った。
全く同じ問題を同じような5つのグループで実施してほとんど計画段階での差はなかったのに、倍の時間がかかっている。これは、マネージメント能力の差なのだろうか?・・・いやいやそんなことはない。プロジェクトマネージメントの計画がないということは、成功するのも失敗も、神様だけが知っているということなのかもしれない。不確実だからプロジェクトなのでしょうと言う人もいるけれども、いかにその不確実性に影響されないようにできるか・・・それは、スキームの開発や計画段階の調査によるところが大きい。それとなにより、目的が正しく定義され共有されているということが重要なことなのだと思う。実は終るまでゲームの内容を詳細に理解できていない人が多かったように思う・・・それでは、最短のシナリオが書けるはずはない。
時間はとても大切なもので取り返せないもの・・・今年最後の日につくづくそう思った。
「賢く働くことで激しく働くことに代える」 フレデリック・テイラー
半年前の全体会議の年度目標でこの話をしたことを覚えている来年こそ、この賢さ科学的な管理に基づいたプロジェクトマネージメントでみなさんが幸せになれるように・・・祈りを込めて最後のメッセージとして送ります。
2006年は、みんなの努力のおかげでとてもよい年で終ることができた。ありがとう。
2007年は、協力してもっともっと良い年にしましょうね。
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